Last Updated on 2023年12月1日 by 村上志歩美
あなたは『早期からの緩和ケアの推進』という言葉を聞いたことがありますか?
我が国ではがん対策基本法というものがあります。
○○法と聞くと堅苦しく、難しく感じますよね。
基本的な施策は5つあります。
- がん予防および早期発見の推進
- がん医療の均てん化の促進等
- 研究の推進等
- がん患者の就労等
- がんに関する教育の推進
以前は、「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」と言われていました。
現在の教科書には「2人に1人ががんに罹患し、男性の4人に1人、女性の6人に1人ががんで死亡する」と推定されているとされています(2020年)
がんの早期発見ができるようになったことや治療成績が向上したことが関係しているのかなと思っています。
やはり、早期発見というのが肝になるのでしょうね。
少し脱線してしまいましたが・・・
がん対策推進基本計画という施策もあります。
がん対策推進基本計画は今年(2023年)の3月末に第4期の計画が閣議決定しています。
厚生労働省のホームページを見ていただけると『第4期がん対策基本計画』が確認できます。
ちなみにどこが変わったのか比較するために、第3期がん対策推進基本計画も掲載しておきます▼
2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画の全体目標は、「誰1人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」とされています。
規模がとても大きいのですが、「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」については変わらず取り組むべき課題となっています。
緩和ケアが大切なのはわかる。
でもどうして早期から必要なの?
なぜこんなにも「がんと診断されたときからの緩和ケア」が勧められているのか?
疑問に感じたことはないでしょうか?
私は国が「早期からの緩和ケア」にこだわる理由について、なんとなくわかった気になっていました。
でもよくよく考えたら、早期から緩和ケアを導入することで患者さんにどんなメリットがあるのかわかっていませんでした。
私が衝撃を受けたのは、予後に関する研究発表を知ったときでした。
非小細胞肺がん患者に緩和ケアを早期導入すると予後が改善するという結果がこちらです▼
非小細胞肺癌では早期に緩和ケアを導入した方がQOLも精神状態も改善し、濃厚な終末期医療を受けないにもかかわらず生存期間は延長した。
Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer
何度も言ってしまいますが、本当に衝撃的な内容だったのです。
論文自体は2010年のものですが、衝撃を受けた医療者は多かったと思います。
これは転移を伴う非小細胞肺癌と診断された患者を「標準的ケア+緩和ケア」と「標準的ケアのみ」にランダムに振り分けて行われた研究です。
早期から「標準的ケア+緩和ケア」を実施した群の患者が、「標準的ケアのみ」を受けた患者より生存期間が2.9ヵ月も長かったということです。
つまり、標準的ケアだけでなく、標準的ケアに加えて早期から緩和ケアを実施した方が生存期間が有意に長くなるということ。
身体科の医師と緩和ケア科の医師が併診することで患者のQOLは向上するだけでなく、生存期間も長くなると考えると、やはり早期からの緩和ケアということの大切さに改めて気づけます。
以前は、がんの治療(標準的ケア)の効果が得られなくなった終末期に緩和ケアが始まるという考えでしたが、現在は、がんと診断されたときからスクリーニングが行われています。
必要な患者にいち早く緩和ケアが提供できるような仕組みができてきつつあるのです。
ですが、まだ不十分ではないでしょうか?
それは医療者だけでなく、患者自身も知識がないことが根底にあるかもしれません。
「私にはまだ緩和ケアは早い・・・」
「緩和ケア?末期ということですか?」
やはりまだまだ緩和ケアの誤解は根深くあるように私は思っています。
がん患者さんには、緩和ケアに抵抗を示さずにご自身のQOL向上にも役立つと思ってどんどん緩和ケアの情報を知って欲しいというのが私の願いです。
そして、そんながん患者さんに知識を丁寧に伝えるのが看護師の役割だとも思います。
緩和ケアがどうして早期から必要なのかわかりましたか?
患者さんやご家族に正しい情報を正しい時期に提供したいですね!
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