Last Updated on 2023年4月30日 by 村上志歩美
皆さんは自分の身に「もしも~が起こったら?」と考えたことはありますか?
心配事の9割は起こらないと言われるくらいなので、私たちが日頃どれだけ多くの心配や不安を抱えて生活しているのかを思い知らされます。
私も元々はとてもネガティブ思考で一度マイナスに考えるとドツボにはまるタイプの人間でした。
ですが、私の心配事というのは、今思えばとても小さなことで、どうでもいいような些細なことが多かったように思います。
もし会議で当てられたらどうしよう。
もし道が混んでいて遅刻したらどうしよう。
あとになって思い返すと小さな心配事でも、自分からしたらその当時は何度も繰り返し考えて憂鬱になるようなことってありますよね。
その心配事は起こらなかったかもしれないし、予防しようと行動したから防げたのかもしれないし、実際起こったけれどなんとか乗り越えられたかもしれません。
私の友人は「多少失敗したって、死ぬわけじゃあるまいし」と小さな心配事を心配事として捉えていない人でした。
私はこの「死ぬわけじゃないし失敗しても大丈夫」という考え方にはとても救われたことがあります。
些細なことに不安になっていたときには、とても前向きにさせてくれる言葉でした。
ですが、もし「私の余命が半年だとしたら・・・?」
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について以前とりあげました。
緩和ケア認定看護師が考える終活の支援とは?自分の人生のエンディングを考える人は増えてきました。だからこそ、ACPにおいては看護師の力が必要なんです。 | しぽさんぽ (shiposanpo.com)
日本人は特に死を忌み嫌う文化があったと言われています。
「死」と向き合うことを避けてしまう傾向があります。
ですが、いざ余命が近づいてきたら患者さん自身の価値観を知っておくことの大切さを思い知るのです。
今日は『もしバナゲーム』についてご紹介します。
もしバナゲームって何?
みなさんは『もしバナゲーム』をご存じでしょうか?
もしかすると知っている方もいらっしゃるかと思います。
私はもしバナゲームの存在を数年前に知りました。
もしバナゲームは米国発のカードゲームを在宅・緩和ケア医が日本人向けに開発したものです。カードを用いたレクリエーションで自分や他者の価値観を考えたり伝え合うきっかけになります。
家族間であっても自分の価値観を話し合ったりすることは少ないように感じています。
その価値観が人生や死に関連したものであればあるほど、話し合うことがなんとなく避けられていることさえあります。
ですが、終末期に関わらず自分自身やご家族、大切な人の価値観はとても大切です。
みんながみんな同じ価値観で生きているなんてことはあり得ないからです。
大切にしたいこと、してほしくないことは個人によって違いがあって当然ですよね。
不思議なもので人生の最終段階の話し合いは、家族とするよりも赤の他人との方がしやすいと考えている方も多いものです。
私たちは誰しも寿命がわかって生きているわけではないですし、いつまで自分の意識を保って生きていられるかもわかりません。
自分がもし価値観を伝えられなくなったとき、代理決定をするのは家族(キーパーソン)でしょう。
その人に自分の価値観を伝えておきたいですよね。
話し合わなくたって家族には自分の気持ちは伝わっているものでしょう。
「言葉にしなくても伝わる」と思っていませんか?
100%自分の価値観が相手に伝わっていると過信しない方がいいです。
代理決定する側の家族も気持ちが揺れ動いたり葛藤しながら意思表示しているのですから。
そこに「あの人はこう言っていたから」という確固たる自信を与えてあげてほしいのです。
もしバナゲームの使い方
もしバナゲームは、1人、2人、4人用での使用方法があります。
36枚のカードから「自分にとって重要なこと」を考えながらカードを拾ったり捨てたりして手元に最終的に3枚に厳選して価値観を考えていきます。
カードには「不安がない」「誰かの役に立つ」「家族と一緒に過ごす」「ユーモアを持ち続ける」などの内容が書かれています。
今回は4人で行うヨシダルールを簡単にご紹介します。
- 5枚ずつ各人に配布(手札は互いに見せない)
- 残りのカードは中央に伏せ、そのうち5枚だけカードを開き全員で見れるようにする(場のカードと呼ぶ)
- 手持ちのカードと比べて優先したい内容が書かれたカードがあれば1枚だけ交換する
- 全員がパスをしたら場のカードを流す(新しい場のカードを置く)
- 場のカードが3回入れ替わったところで終了
- 手札の5枚の中から優先度を決める(選ぶもの捨てるものの理由を考えて3位までに絞る)
- 手札の5枚のうちなぜその3つに絞って、2つを落としたのか判断した理由を共有する
実際にやってみないとわかりづらいのですが、手札として残したカードをどうして自分が重要に思っているのか、自分が選ばなかったカードを選んでいる他者がなぜそこに価値を見いだしているのかを知るきっかけになります。
もしバナゲームがオススメな理由
もしバナゲームのいいところは、自分の深層心理を知ることと他者の価値観を知れること、そしてあらためて自分の価値観が自分の価値観に深みを与えてくれる可能性があることだと思います。
病気をしていなければ、なかなか「もし余命が半年だとしたら?」と考えることはないでしょう。
何を大切にしたいかということを突き詰めて深く考えたことがない方は多いと思います。
アドバンス・ケア・プランニングというと仰々しく感じて構えてしまうかもしれませんね。
患者さんによっては何を大切にしたいのか自分の言葉で表現することが難しい方もいるでしょう。
ですが、もしバナゲームであれば、カードに様々な価値観がすでに用意されていますから、「これは私にとって一番重要」とか「これはそこまで重要視しないな」という選別ができます。
しっかりと向き合って考えてみると、自分でも気づかなかった自分の価値観に気づけることもあるでしょう。
もしバナゲームでは同じカードに価値を見いだしていたとしても、その理由はそれぞれ違う場合だってもちろんあります。どんな理由でこのカードを選んだのか、選ばなかったのかという理由に焦点を当てることも大切です。
もしバナゲームで気をつけていただきたいのが、論破合戦にしないことです。
自分の価値観を大切にするあまり、他者の価値観を否定したりしてはいけません。
「そういう考え方もあるんだ」と受け取るようにしましょう。
あなたがあなたであるように、他者もそれぞれの人格や考え方、価値観を持った尊厳ある他者です。
お互いによい刺激を与え合えるのが理想ですね(^^)
がんの終末期になって、余命1ヵ月ほどのところで話し合うよりも、できれば早い段階で話し合うご家庭が増えるといいなと個人的には思っています。
病気になる前から価値観を大切な人と分かち合っていることで、治療を受けるときに望んでいた生活が送れる可能性は高くなるでしょうから。
本当は受けたくない抗がん剤をなんとなく周りの意見に合わせて受けている方はいませんか?
急変時の対応を家族の価値観だけで決めていませんか?
「もしものとき」を想像して話しておくことってとても大事ですね。
今日は『もしバナゲーム』のお話しでした。
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