Last Updated on 2023年1月5日 by 村上志歩美
ご飯を食べるように言われるけど食欲がないんだよ。
食べないと弱っちゃうよね。
がん患者さんは食欲不振に悩まされることがあります。
食欲不振とは、食物を摂取したいという生理的欲求の低下した状態です。
食欲不振は進行がん患者の60~90%に出現する症状と言われています。
患者さんは食事がとれなくなることに恐怖心があります。
昔から「食べられなくなったら終わり」と言われていたこともあるそうです。
ご家族は食べることが元気になることだと思っていることもあり、「食べないと元気になれないよ!」と必死で食べるように要求することがあります。
思うように食事が摂れないことは患者さんにとってもご家族にとっても不安ですよね。
食欲不振の原因/アセスメント
食欲不振の原因には、疼痛などの苦痛、高カルシウム血症、胃拡張不全症候群、口腔の問題、嚥下障害、消化管閉塞・便秘などがあります。
がんによる症状 | がん悪液質 口内炎、口腔内・食道カンジダ症 電解質異常、便秘、嘔気・嘔吐など |
消化器系の病変 | 消化管狭窄・閉塞による胃内容物停滞、炎症など |
治療によるもの | 薬物、高カロリー輸液 放射線療法など |
心因性 | 不安・抑うつ、対人関係など |
環境の不備 | 病室の環境、食習慣の変化など |
食欲不振のアセスメントについて確認すべきポイントがあります。
- 食欲不振の有無と程度
- 病状・病期の把握
- 食欲不振の原因・誘因
- 最近の経口摂取の状況
- 今までの食習慣、食事の嗜好
- 食事動作による影響
- 食欲不振に対する患者の思い
- 家族が患者の食欲不振の捉え方
お椀を持ったり体を起こすことで疼痛があるため食べる気にならないなど食事動作による影響もあるため、食欲不振以外の症状も把握しておかなければなりません。
食欲不振の治療
食欲不振の治療としては、症状を引き起こしていると考えられる原因に対する治療をします。
疼痛コントロールや排便コントロールといった症状緩和を行ったり、心因性であれば不安や抑うつなどの治療も必要となる場合もあります。
また、食欲不振を引き起こす原因となっている薬物がないかも考え、メリットとデメリットを検討した上でその薬物を中止することもあります。
消化管運動促進役を使用したり、副腎皮質ステロイド薬を使用する場合もあります。
消化管運動促進薬としては、ナウゼリン10mg3~6錠を食前に服用する場合やプリンペラン10mg/Aを毎食前に1Aずつ静脈注射する方法などがあります。
副腎皮質ステロイド薬に関しては、予後予測が3ヵ月未満で、食欲不振、嘔気・嘔吐、全身倦怠感、呼吸困難の症状緩和を目的として使用することがありますが、予後を考慮して使用するようにしましょう。
緩和ケア病棟入院中の患者さんが、正月に一時帰宅する際にステロイドを使用した事例もありました。
ご家族で過ごす最後の正月を楽しむことを目標にしていたからです。
ステロイドは漸減法と漸増法があります。
リンデロン®4~6mgを3日間投与し、効果がある場合は、効果のある最小量(0.5mg~4mg)に減量し、効果がない場合は中止するのが漸減法です。
漸増法は、リンデロン0.5mg/日から開始し、0.5mgずつ増量し4mg/日までとする方法です。
食事中の状況をよく観察し、効果を判定しましょう。
食欲不振に対するケア
- 環境調整
- 食事の工夫
- 口腔ケア
- 家族との協力
- 食事以外の栄養補給について話し合い
- 経管栄養や高カロリー輸液の検討
食欲不振の患者は食べられないことのつらさを感じている場合があります。
リラックスして食事がとれるよう環境調整をしましょう。
食べやすい食べ物がないか、取りいれられる嗜好品がないかも話し合っておくとよいでしょう。
冷たい麺類やアイスクリームなら食べられる場合もあります。
食事形態の変更も考えながら、ときにはご家族の差し入れの品などを食べてもらうのもいいでしょう。
化学療法を受けていて味覚異常がある場合は、亜鉛欠乏の場合もあるため亜鉛の投与も効果が得られるかもしれません。
口腔ケアしっかりしましょう(^^)
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