Last Updated on 2023年2月19日 by 村上志歩美
今日は、看護師のお仕事についてお話ししてみたいと思います。
今はだらしなく過ごしている私なんですけれども、以前の記事でもご紹介したように『緩和ケア認定看護師』の資格を持っています。
看護師や看護学生なら恐らく聞いたことがある『認定看護師』という資格ですが、実際にその資格を得るまでにどんな道のりが待っているのかは、よほど関心がある方でないと知らないと思います。
もしも今、認定看護師に興味があったり、ゆくゆくは資格を取りたいと思っている方に、リアルな『認定看護師への道』をご紹介したいと思います。
ちなみに、私は『緩和ケア分野』ですので、緩和ケアに特化した部分も盛り込みますが、分野共通部分も多いので参考までにどうぞ。
認定看護師とは?
看護師と認定看護師ってどう違うの?
そもそも、看護師と認定看護師の違いって何?って思う方もいるかもしれません。
私も看護学生の頃に「へぇ~そんな資格あるんだ~。資格持ってたら箔が付いて格好いいだろうな」くらいに思っていました。
就職試験の面接の時に「将来は認定看護師になりたいです!」なんて言えば、一目置かれて採用されるのでは?という邪な気持ちもありました。
教員には「難しい道だから、どの分野でどんな仕事をしたいか具体的なビジョンがないのに認定看護師になりたいなんて言ってはいけない」と言われましたね。
ネット上にはいろいろな情報がありますが、惑わされずに『日本看護協会のホームページ』を見ていればまず間違いないです。
というか、それがすべてです。
緩和ケア、感染管理、心不全管理など20近くの専門分野に分かれており、認定看護師というのは、その専門分野のスペシャリストというわけです。
ちなみに、看護師の永年資格と違って、認定看護師の資格は5年更新となります。
更新するためには、日々の看護実践だけでなく、学会発表や研修参加によるポイントをコンスタントにためていくことも必要ですし、初回の更新審査では「看護実践のレポート」提出もあります。
このレポートが非常に厄介で、1事例を選んでまとめるのですが、その事例で自分の認定看護師としての資質や成果を文章で相手に伝えなくてはなりません。
「この認定看護師の看護実践が見える!」と伝わる文章が書けないと、残念ながら更新できません。
文字制限がある中で、「自分が認定看護師として介入したからこそ、患者家族にこういう反応が得られたと証明できる看護実践」をまとめないといけないわけです。
実際に私が知る中には「あなたが認定看護師として専門的に関わったという実践が見えません。」という理由から不合格となった方もいます。
結構シビアな世界なんです。
それだけ、求められる期待が高いのと、今以上の水準を維持し続けなければならないということです。
認定看護師ってどんな役割が求められるの?
では、実際に認定看護師には、どんな役割が期待されているのかというと、『実践・指導・相談』という3つの役割があります。
実践と言えば、読んで字のごとくですし、自分が実践するケアなので、一番わかりやすく、行動しやすいところですね。
ただの看護実践ではなく、自分がその道のスペシャリストとしての知識・技術を最大限に活用した、認定看護師だからこそできる看護実践を求められます。
分野によっては、医師より詳しい専門知識を持っているので、治療方針を一緒に考えながら看護ケアを行います。
私の場合は、緩和ケア分野なので、特に多いのは『がん性疼痛』や『心理的サポート』に関する実践です。
薬剤調整に関しても、患者と面談をした上で、現状把握をして、症状緩和の方法を考えて、医師に提案したりすることもあります。
実践を繰り返すうちに、医師との信頼関係が築けるため、困ったときには医師から直接相談がくるようになることもありますよ☝
頼ってもらえるというのは、仕事のやりがいにも繋がりますし、何より自分の看護ケアが患者さん屋家族の役に立っているというのが素直に嬉しいですよね!
指導は、看護職に対して行う指導なのですが、わかりやすいのは、院内でのキャリアラダーなどに組み込んで行う教育、病棟勉強会などが想像しやすいと思います。
全体教育だけでなく、個人への指導も大切ですね。
日々の業務遂行状態を見ながら、的確なアセスメントや看護実践ができるようになるために、看護職の教育をしていく必要があります。
例えば「この部署の看護師は、医療用麻薬を使用する機会が多いが、投薬の正しい知識や評価方法に問題がある」と感じたら、痛みの評価方法や医療用麻薬に関する知識の提供を行い、看護ケアの実践に生かせるまで繰り返し指導をします。
まずは、患者の訴えを表出し、その訴えから痛みの種類を的確にアセスメントする能力が必要で、その上でその痛みに効果的な薬剤や非薬物療法も考慮して看護実践をする必要があります。
行動レベルに落とし込んで教育をすることって、難しいのですがとっても大事です。
そして、できている部分に関しては、もちろんポジティブフィードバックを心がけます。
全体の質を上げるのは、年単位で考える必要があるのですが、私は、部署の中心人物や関心を持っているスタッフを選抜して、個別で指導をしたりしていました。
そういう人選って大事で、指導を受けたスタッフが成長し、成功体験をすることで、その後の後輩育成に力を入れてくれるようになるものです。
数年かかりますが、そうやって看護の質の底上げができていくんです!
そして最後に相談という役割ですね。
私は個人的に認定看護師の役割の中で、相談が一番難しいと思っています。
相談は、対象を看護職に限定せず、コンサルテーションを行うことなのですが、そもそもコンサルテーションって何?って感じですよね。
コンサルテーションとは、簡単に言うと、困った問題について検討し、よりよい援助のあり方について話し合うプロセスのことです。
ちなみに相談を受ける側はコンサルタント、相談する側はコンサルティと言います。
この相談という役割は、単なる悩み相談ではなく、コンサルティが問題解決の糸口を自身で発見したり、問題解決に向けて行動できるようになることがゴールなんです。
ということは、単純に「こうしたらいいよ」とアドバイスをすることではありません。
あくまでも、コンサルティが自身で考えて行動変容が見られるようになるためのサポートなんです。
そして、行動変容が見られるようになるまでは、継続したフォローアップが必要だったりもします。
難しいですよね。
答えを教える方がよっぽど簡単です。
このように、認定看護師の役割は、実践・指導・相談という3本柱になっています。
実践能力が高いだけでもだめなんです。
認定看護師になる要件
ここまででなんとなく認定看護師について理解していただけたかなと思います。
これからは、認定看護師になるためには何が必要かというお話になります。
認定看護師って誰にでもなれるの?
認定看護師になるには、認定審査に合格する必要があります。
その認定審査を受けるためには、認定看護師教育課程を修了しなければなりません!!
認定看護師教育過程って何?
特殊な学校に行く必要があるの?
認定看護師になるためには、認定看護師教育機関に入学・卒業することが必要です。
その認定看護師教育機関への入学資格は、
①日本国の看護師免許を持っていること
②看護師免許取得後、実務研修が5年以上あること(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
この2点が必要となります。
ちなみに現在は、A過程とB過程があるので、詳細は日本看護協会のホームページへどうぞ。
受験する認定看護師教育機関によって、出願が定められているので、各教育機関のホームページをチェックしておかなければなりません。
教育機関によっては、認定看護分野に関する患者の症例件数が定められている場合もあります。
また、実際に受験をするとなると、ご自身の職場が認定看護師を求めているかどうかも重要となります。
職場によって、認定看護師教育機関への入学~卒業まで金銭的な支援をしてくれる場合もあります。
例えば、
①受験料、入学金、授業料、参考書代、家賃、交通費を全額職場が負担してくれる(もちろん休職ではなく、研修扱いのため通学中の給与支給あり)
②入学金、授業料、家賃、交通費を職場が負担してくれる(研修扱いで給与支給あり)
③家賃、交通費を職場が負担してくれる(給与支給あり)が、学費の支援はなし
④休職扱いで給与支給なし。学費の支援なし。・・・などなど。
この4つに限るわけではないのですが、職場によっては支援が手厚いところもあります。
施設がどの程度認定看護師を必要としているのかにもよりますが、必要とされている施設ほど金銭面の支援が手厚い印象があります。
逆に、認定看護師が多い施設では、「もう認定看護師は足りているので、どうしてもなりたいと思うのならば、自分の時間とお金を使ってご自由にどうぞ」というスタンスもあるんですよね。
なので、ご自身の勤務している施設の支援がどれほどあるのか、事前に確認しておくことをおすすめします。
教育機関によっては、臨地実習が県外であることも十分あり得ますので、住居が二重になることもあり得ます。
その場合の家賃の問題は、非常に大きいです。
私の頃は授業料は実習費込みで80万円だったと思うのですが、今は100万円になっていたので、特定行為が組み込まれたこともあってか、更に高額になっているみたいです。
職場の金銭的な支援が望めない場合、計画的に資金を確保しておかないといけませんね。
ちなみに私は、職場から離れた教育機関に入学したため、一度は職場近くに借りていた賃貸を退去して、教育機関の近くに引っ越しました。
半年の研修期間を終えて、また職場近くに引っ越すという・・・
敷金礼金の支払いだけでなく、半年という短期間での退去による違約金などの支払いもあったので、結構な負担額になりました。
ちなみに、「職場近くの家」+「教育機関近くの家」+「実習施設近くのホテル」と一時期3カ所の家賃と宿泊費を払っている猛者もいましたよ!
敷金礼金や違約金を考えると、何が正解なのか…もはやわかりません。
認定看護師教育機関の受験勉強
認定看護師になる流れはなんとなくわかった!
認定看護師教育機関の受験勉強のコツは?
受験用のテキストとかあるの?
認定看護師教育機関の受験が決まったら、まずは願書の提出があるのですが、自分の経歴を書くだけではないんですよね。
これも受験する教育機関のホームページをチェックするしかないのですが、私が受験したときは、専門看護分野に関する症例報告書を5事例提出というものがありました。
自分が関わった症例を選出して、患者のアセスメント、看護計画の立案、実践、評価をまとめたものを5事例提出しなければならないので、どの事例を選ぶかも重要です。
将来的に受験しようと思っている場合は、日々考えながら看護介入をしていくといいのですが、私は突発的に認定看護師を目指したレアケースなので、遡ってまとめあげた感じでした。
何事も計画的に進めた方がいいですね。
願書と共に提出する書類は莫大な種類がありましたので、各教育機関のホームページで必要な書類を丁寧に仕上げなくてはなりません。
本当に大変なので、計画的に!ですね。
そして、受験勉強に関してなのですが、教育機関用や専門看護分野ごとの試験問題集は存在しません。
何もないんですよ。
教育機関によっては、過去問が掲載されているかもしれませんが、私も見たことがないのでわかりません。
私の場合は、職場の先輩が同じ教育機関を卒業していたので、先輩に実際の入試問題をコピーさせてもらって勉強していました。
テキストがあって、「試験範囲はここです!」って言われる方がよっぽど楽ですよね。
私が先輩に教えてもらって購入した本がこちら。
緩和ケアの赤本です。
あとは、自分でいいなと思って購入したのがこちら。
私は、この4冊メインで勉強しました。
あとは、聖霊三方原病院の症状緩和の症状緩和ガイドは、認定看護師になってからも勉強になるので今でも良く見ています。
暗記することはとにかく暗記!
あとは、オピオイドスイッチングのときの換算をしたり。算数の要素も出てきます。
学生の時と絶対的に違うのは、「働きながら受験勉強をする」ということです。
想像しているよりもきついんですよね。
仕事から帰ってきて、勉強する気力が残っていないけど、休みの日は休みの日で洗濯したり買い物に出かけたり…何かと忙しいですよね。
ここはもう個人の努力次第なので、頑張ってください!!
私は受験を決めたのも突発的だったので、2日休みだったら、1日は丸々勉強の日と決めて短期集中でした。
何事も計画的にできることが一番ですね。
認定看護師教育機関入学後の過ごし方
受験に合格したら、入学式をして翌日からは早速講義が始まります。
パワーポイントで自己紹介をしたり、分野のリーダーを決めたりと学生さながらです。
ちなみに、認定看護師は品格も必要だという大人になってから注意を受けることのなかった服装や言葉遣い、立ち居振る舞いに関しても厳しいご指導があります。
私は看護師6年目で受験、7年目で入学だったこともあり、私の通っていた教育機関では最年少でした。
全国各地から経験年数も様々な看護師が集まるので、30代半ば~50代後半の大ベテランの看護師さんも同期になるんです。
アセスメント一つとっても、自分の経験不足と勉強不足を痛感するんですよね。
でも、認定看護師を目指すメンバーとして、こんな私も温かく受け入れてもらえて、卒業して県外に離れた今でも交流があります。
教育機関でたくさんの出会いがあるんだね。
久しぶりの学生生活でつらかったことは?
座学にグループワークに試験に実習に…てんこもりなのですが、決まってみんながきつかったと言うのが、臨地実習でした。
私は緩和ケア分野なので、訪問看護実習が1週間、緩和ケア病棟実習が1ヶ月程度ありました。
毎日、自分に足りないものを突きつけられる感覚ですね。
もちろんレポートもあります。みんな実習中は寝不足でひどい顔してました。
担当患者を受け持ちながら看護過程の展開をして、必要な看護ケアの実践をするのですが、緩和ケアならではの看取りが続くこともあります。
私は実習中に3人の患者さんを受け持たせていただくことになりました。
最期を心穏やかに家族と過ごしているところに、勉強中の実習生が来るわけですから、患者さんや家族にもなるべく負担にならないように配慮が必要です。
未熟な自分に何ができるのかということを考えさせられました。
実習後には症例をまとめて、事例発表会もありました。
思っていたより大変なんだね。
息抜きってどうしてたの?
余談ですが。
実習やレポートやテストは本当につらいのですが、ノイローゼにならないように息抜きも上手にしていく必要があります。
私は、同期と連休があったら県外にドライブに行ったりしていましたよ。
あと、入学すると『学生証』をもらえるので、20歳代後半にして『学割』を受けられるんです。
在学中は生活費の他にも参考書を買ったりとなにかと入り用だったので、ときには外食をしたのですが、学割を使ってお得感を味わっていました。
ストレスに対処しながら、メンタルは非常に強くなりました。
卒業前には修了試験に合格しなければならないのですが、これが難易度が高かったんです。
半分以上が不合格だったような気がします。
私もあと1問点数が足りず、再試験料2万円だったか3万円だったか?支払ってなんとか合格し、半年間の学生生活は終了しました。
認定看護師認定審査
認定看護師教育機関を卒業してからは、研修期間終了ということで今まで通り臨床現場に戻ることになります。
卒業おめでとう。
もう認定看護師になれるの?
教育機関の開講期間にもよるのですが、私は11月に卒業して、翌年6月に認定審査となるので、半年間は仕事をしながら受験勉強をすることになりました。
卒業してすぐに認定審査であれば、一番知識が新しいうちに試験に臨めるのですが、半年空いてしまうということが不安で仕方ありませんでした。
なんてったって、臨床は戦場ですからね。
忙しく残業三昧の日々での受験勉強は気が遠くなります。
卒業後も県内の同期と集まって勉強会をしたりして、なんとかモチベーションを維持しながら頑張りました。
私はさらに不運なことに、6月に試験が待っているというのに、4月に部署異動になりました。
これはさすがに私も荒れましたよ。
受験前になぜ環境を変えるのか!これで不合格だったら、絶対看護部のせいだ!!と怒っていました。
まず、病棟ルールを覚えたり、全く勉強してこなかった科の勉強が入ってくるわけです。
受験に専念させてほしかったですね。
教育機関によっては、卒業後も認定審査までサポートしてくれるところがあると思います。
卒業後も集まれる同期で集まって、認定審査の過去問をひたすら解いて対策を練っていました。
認定審査の手引きに関しては、下にリンクを貼っておきます。
6月に認定審査、7月に合否発表となり、この合格をもって、晴れて認定看護師になりました。
今は10月認定審査、12月合否発表になっているようですね。
最新情報はすべて日本看護協会のホームページで確認が鉄則です!
受験の希望もウェブ上でしますので、チェックしてください。
ちなみに、認定審査を受けるのにも受験料51,700円(税込)、合格しても認定料51,700円(税込)がかかりますので、受験して合格すると10万円以上の出費が待ってますよ。
認定看護師になるには、勉強にかける時間と努力、そして莫大なお金も必要です。
合格してからも維持するために学会や研修参加費(旅費や交通費)もかかります。
認定看護師は水準を維持するために5年更新なので、更新のときには受験料と登録料もかかりますからね。
私は一時期、認定看護師貧乏でした。
認定看護師になるのも、なってからも大変なんだね。
根性とお金が必要だってことはわかったよ!
今後は認定看護師になってからのこともご紹介しますので、是非よろしくお願いします。
これから認定看護師になりたいという方に少しでも参考になったら嬉しいです。
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