Last Updated on 2023年1月13日 by 村上志歩美
「この患者さん苦手だな」
「他の看護師と話すときは笑うんだな」
苦手な患者さんがいたり、患者さんから距離を置かれてさみしく感じたことはありませんか?
頼ってほしいのに頼ってもらえないこと、自分が看護師として価値がないと思われていることってとても悲しいですものです。
ひとって生まれてから成長していく過程で様々な経験をしますよね。
家族だけでなく、保育園や幼稚園、学校、会社など様々なコミュニティでたくさんの人に出会って、気持ちや考え方に影響を受けます。
小学生までの自分、中学生の自分、高校生の自分、看護学生の自分、看護師になった自分、長年勤めた病院を辞めた自分。
私自身振り返ってみると色んな時期に色んな人と色んな体験をして、今の感性が育まれたように思います。
患者さんも同じで、それぞれがその人格になるまでにたくさんの経験をしてこられたんですよね。
それぞれの価値観があるから、合う人・合わない人がいて当然ですね!
私はよくがん看護の現場で「患者さんが相談がしたいって呼んでます」なんて同僚から声をかけられました。
現場で患者さんのことも看護師のこともよく見てきたのですが、患者さんも看護師をよく見ているんですよね。
私たち看護師が特定の患者さんを苦手に思うことがあるように、患者さんも「この看護師さんに相談したい」とか「この看護師さんは苦手だな」という感情になるものです。
せっかくなら、患者さんからも同僚からも頼りにされる看護師になりたいですよね。
今日は私が見てきた中で患者さんがどんな看護師になら心を許すのかを考えてみたいと思います。
病室に”心ごと”入ってくる
看護師って忙しいんですよ。
よくわかります。本当に忙しいんです。
私は1日1万5千歩~2万歩ほど病院内を駆け回っていました。
患者さんの部屋を訪れるときもタイムスケジュール通りに仕事を進めたくてかなり焦る気持ちがあるんですよね。
ですが、その焦りを患者さんは見逃さないものです。
看護師さんはいつも忙しそうね。大変なお仕事だね。
看護師が忙しく働く姿を見ている患者さんは、労っているようで本心は「落ち着いて私の話をちゃんと聞きなさいよ」と思っているかもしれませんよ。
もしかすると、病室に電子カルテと体だけ入ってきて、心は違うところに置いてきているかもしれませんよね。
私も本当に忙しいときは、“心ここにあらず”な状態で訪室していた経験があるのでよくわかるんです。
そんなときはどう頑張っても患者さんからの信頼は得られないものです。
以前、私が受けた講義のなかで、
お医者さんや看護師さんは、いつも体だけ病室に入ってきて、心はいつも病室の外にいますよ。
こんな発言をされたという事例を聞いたことがあります。
それから私は、どんなに忙しくても患者さんの目を見て、なんならベッドサイドに1度はしゃがみ込んでお話をするようになりました。
ナースコールが鳴るので絶対に中断しなければならないし、長い時間滞在はできないのですが。
結局は患者さんの信頼を勝ち取るのは、こういう日々の小さな行動の積み重ねなんだと思います。
慌ただしい業務に追われ、あなたの心も病室の外にありませんか?
しっかりと向き合う
最近は特に患者さんとのコミュニケーションに苦手意識を持っている看護師が増えたような気がします。
患者さんから信頼される看護師は、成功・失敗どちらにしても絶対にその場から逃げない看護師だと思っています。
患者さんに「A看護師さん呼んできて」と言われて、すぐにA看護師に対応を変わってもらうようではいけないんですよね。
これ、本当に現場ではよくあるんです。
先輩看護師に丸投げしてしまう看護師は結構います。
きっと、患者さんに自分が必要とされていないようで悲しくなる気持ちってありますよね。
私がすごいなと思っていた後輩がいるのですが、彼女はそんなときにとりあえず用件だけは絶対に尋ねていました。
とにかく受容と共感というスキルだけでその場をやりきっていましたが、結局彼女には答えが出せないレベルの相談だったんですよね。
それで私に相談が来たのですが、患者さんの訴えはしっかりと捉えた上で彼女が患者さんに返した答えを私に報告してくれました。
そこまでですごいなと思ったのですが、
自分の対応では患者さんの本当の悩みに答えられなかったと思います。先輩がどんな風に答えるのか私も知りたいので、一緒について行って話を聞かせてください!
とまあ、ここまで言ってくれました。
この姿勢には、本当に尊敬の気持ちしかありません。
二人で患者さんの元に行って、あらためて面談をしたわけですが、患者さんもとても安心しているようでした。
最後に患者さんは、この後輩看護師に
あなたもいつか、こうやって後輩ができたらいろいろと教えてあげてね。話を聞いてくれて本当にありがとう。先輩を連れてきてくれてありがとう。
と声をかけてくれていました。
自分に対応できないかもしれないと思っても、患者さんのそばを離れない看護師が伸びるんです。
このときの後輩は、今では立派に後輩たちの指導をしてくれています。
素直なやりとりができる
患者さんでなくてもそうですが、誰かに隠しごとをされるのってつらいですよね。
私の祖母はがんで亡くなりましたが、母(祖母からすると一人娘)の希望で告知はされませんでした。
体調が一向に良くならないのだから、「大病に違いない」と思っていたでしょう。
病気をしている本人に告げられなかったのですから、とても苦しんだと思います。
当時学生だった私も、何度も祖母から探りを入れられました。
祖母にこっそりと「私はがんなんじゃないかな?お母さんに何か聞いてない?」と尋ねられたときは、さすがに私もつらかったんです。
患者さんには知る権利がありますよね。
自分の体のことや寿命のこと、知りたいことは沢山あるでしょう。
ですが、患者さんにとっては医療者から隠しごとをされたり、あいまいな返事をされたと感じると疑心暗鬼になってしまいます。
患者さんは、隠しごとをしたりごまかしたりされることを嫌う傾向にあります。
何か尋ねても「う~ん…」と唸っておしまいになっていませんか?
もちろん看護師として伝えていいこと、伝えていけないことはあります。
これまでの経験で、患者さんは医師には相談しづらいこともあると知りました。
先生が頑張ってくれているから治療をやめたいなんて言えない
こんなとき、看護師の立場だからこそ素直にやりとりができたりしますよね。
率直にどうして患者さんがそんな風に感じたのかを聞けますし、個人的な見解も伝えられます。
患者さんはデータうんぬんではなく、医療者の個人的な考えを知りたいと思っている場合もありますから、その点は看護師だからこそ介入できるポイントだと思います。
生存率何%とかいう数字よりも、もっと人間味のある「残された時間を誰とどこで過ごそうか」と話し合う仲間を欲していたりするものです。
親身になってやりとりできる看護師は、患者さんにとっては安心する存在になるのは間違いありません。
約束を守る
人として当然と思われそうなことですが、あえて取り上げました。
約束を守れない看護師が存在するからですね。
点滴の時間や検温の時間、清拭や入浴の時間など患者さんと約束したことを忘れてしまう看護師は一定数いるんです。
遅れてしまうならまだましですが、約束したことさえ忘れて帰ってしまうこともあるくらいです。
煩雑な環境で働いているとどうしても命に関わらない優先度の低いものは後回しにされてしまったりします。
夜勤になって患者さんから「あの看護師は帰ったのか?」とお叱りを受けることもあります。
患者さんは誠実に対応してくれる看護師でなければ信用してくれません。
そして、患者さんは相談した相手を覚えているものです。
一度相談してみて、看護師から「その後どうですか?」と数日後にでもあらためて話題を振ってくれるのを待っていたりします。
それがなければ、「この看護師さんには相談しても聞いてくれるだけで何も解決しない」と評価されてしまします。
看護師さんは何かあったら相談してって言うけど、結局相談したって何の解決にもならない。もう相談したって時間の無駄だから何も言わない。
こんなにはっきりと言われたこともあるくらいですからね。
聞いてもらうだけで気持ちが軽くなるという方もいれば、相談するからには解決してほしいと思っている方もいます。
患者さんが何を求めているのかはしっかり判断したいですよね。
自分で解決できない場合は、その情報に詳しい専門家につなぐことも大切です。
たとえば「近隣のホスピスについて詳しい看護師をご紹介しますね」とか「高額療養費制度について詳しいソーシャルワーカーをご紹介しますね」といった、専門家に橋渡しできるといいです。
解決できそうな部門に渡しても、その後も経過を尋ねる看護師が一番患者さんからモテると思っています。
サポートすると決めたなら最後までその約束を果たしましょう(^^)
明るくハツラツ、そして穏やか
がんの患者さんは特に気持ちが落ち込んだり、とても繊細なところがあります。
入院中に患者さん同士が仲良くなったり、連絡先を交換していることってありますよね!
看護師の仕事ぶりは患者さんたちから「口コミ」として広がります。
受け持ち看護師は○○さんに変えてらえる?他の患者さんからの評判がいいから私も担当してもらいたい!
担当看護師を変えてほしいと言われたことありませんか?
患者さんから指名してもらえるのはうれしいことですが、同僚の目があるのでハラハラしますよね。
私は緩和ケア認定看護師としてがん患者さんとたくさん面談をしてきた経験があります。
基本的にスタッフナースでは対応困難な患者さんだから紹介・依頼されて介入することになります。
だからこそ、対応困難な症例では、良くも悪くも患者さんから看護師に対する口コミをたくさん聞くことになるんですよね。
今まで私が患者さんからの「口コミ」で人気だった看護師について振り返ってみました。
まず、とにかく明るくてハツラツとした看護師はとても人気でした。
「○○看護師さんがいてくれるとこっちまで明るい気分になる」とか「落ち込んでいたけど笑わせてもらった」と言っている患者さんはけっこういるんです。
ポジティブなパワーを持った看護師は患者さんを明るくしてくれますよね。
ですが、本当にしんどいときは明るすぎる看護師の言動が負担になる場合もあります。
そんなときは、一緒に落ち着いて悩みを聞いてくれる看護師に患者さんは救われます。
ここの緩急の付け方がけっこう難しいです。
明るく悩みを笑い飛ばしてほしいわけではありませんからね。
患者さんは、親身になって相談に乗ってくれる優しさと同時に気持ちを前向きにしてくれる明るい看護師を求めています。
明るくて優しい看護師って、周りを元気にするのがとても上手です。
だから、そんな看護師がいる日は病棟全体が明るくなったりもしますよね。
数年に一人くらいの頻度で、そんな逸材がいます。
患者さんだけでなく看護師のことも明るくしてくれるような存在の看護師のことはぜひ真似してほしいです。
緩和ケアの世界で求められる看護師
私が医師から介入依頼を受けるのは、どこか少し「とっつきにくい患者さん」のことが多かったと思います。
医師も関わりづらさを感じてしまうことがあるんですよね。
医師も患者さんもそれぞれの価値観をもって生きてきた人間なので、相性があって当然です。
私のことを認定看護師として重宝してくれた医師に、こんな風に言われたことがあります。
あなたは患者さんの心のドアを全開にして入って、全開にして出て行くよね。
どの患者さんに対しても同じようにガツガツいけるメンタルがすごいな~。
ちょっと私の関わりがガサツに思えてしまうかもしれませんね(゚ω゚)
私はポジティブに受け取って、「誰に対しても物怖じしないで対等に関わろうとするスタイル」を褒めてもらえたと思うことにしています。
正直なところ、私はコミュニケーション能力がバケモノだと言われたことがあるくらいコミュニケーションをとるのが大好きです。
相手を知りたいとか関わりたいという前向きな気持ちは、絶対相手にはいい雰囲気で伝わると信じていますから。
いかがでしたか?
簡単ではありましたが、私が認定看護師になって7年の間に見てきた患者さんとの関わりから得られた「患者さんが求める看護師像」についてお話ししてきました。
苦手なこともあるかもしれませんが、まずは患者さんを知ろうと思うことから意識していくと看護師としてとても成長すると思います!
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